Atto Vannucci アットヴァンヌッチのセッテピエゲ(その2)

2020年7月28日火曜日

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また期間が空いてしまいました。。。

文章を書くのもそうですが、分解・分析をするのにそれなりにまとまった時間が必要で、それがなかなか取れない次第です。
まあ気が向いたとき更新なので、よしとしましょう。

合わせ部分の縫製を見てみる

それではバラしていきましょう。
ただバラすだけであれば、合わせの糸を切って解けばいいのですが、理解のために縫製時の逆順で追っていきます。

Atto Vannucciでは一本の糸で合わせを縫って、閂も作っているようでした。

合わせ部分と閂の糸を分ける/分けないは、職人やメーカーによって変わってくるかと思います。
1本でやるメリットとしては、少しだけ作業の手間を省略できることでしょうか。

スリップステッチが小剣側にあるため、大剣から小剣に向かって合わせ部分を縫っているようですね。
手順としては、

①玉留めなしで合わせを縫う
②スリップステッチを作る
③小剣側の閂止めをする
④大剣側の閂止めをする

もしくは

①大剣側の閂止めをする
②合わせを縫う
③スリップステッチを作る
④小剣側の閂止めをする

だと思います。



スリップステッチが出ているあたりを裏返してみましたが、なにかゴチャゴチャしていますね。
スリップステッチを引っ張ってみますがびくともしません。
どうやらスリップステッチが役割を果たしていないようですね。。

スリップステッチを引っ張れば、合わせ部分が締まってくるのですが、ゴチャゴチャした部分で糸が絡まってしまっているようです。
これではスリップステッチの意味がありません。

折りを見てみる

 
※画像内の番号は折る順番です。

折り目の数を数えてみましょう。

大剣側は「4」と「7」
小剣側は「1」と「7」

折り目だけ数えると左右あわせて「11」と「8」ですが、大剣の⑩と⑩'は一緒に折るため、実際に折る回数は「10」と「8」になります。


Sette Piegheの「Sette」と折る回数は一致していませんね。。。まあ、片側を7回折るところからきているのでしょう。

こうして分解して見てみると折幅は結構テキトーですね。
 

個人的には、折っていくほど折幅が太く(2、3mmずつ)なっていくほうが見た目にも綺麗かなと思っています。
一番上の三角形が一番細く、だんだんと太くなってゆくイメージですね。

ちなみに小剣側の折り方ですが、同じセッテピエゲでもいくつかバリエーションがあります。

※写真がブレてしまった。。。

メーカー 概要
タイユアタイアジア7つ折りの上に1枚被せる
タイユアタイアジア(オーダー) 左2回折り(折り目は3)、右7回折り
Atto Vannucci 1枚折ってから、7つ折りを被せる

なぜバリエーションがあるのかは、よくわかりません。。。

ネクタイの厚みとノットの妙

一般的なネクタイは、表地、裏地、芯地で構成されています。
芯地があることで、ノットとディンプルをしっかり形作ることができます。

ネクタイに使用するシルクの一般的な厚みは、0.5mm前後。
芯地はウール1枚芯、ウール・コットン2枚芯とありますが、だいたい1.0mmほどです。

一般的なトレピエゲのネクタイの厚みをこの数値を下記式で求めてみます。

『シルクの厚み×シルクの重なり+芯地の厚み』

0.5×4+1 で「3.0mm」ほどとなります。

シングルノットの場合、ネクタイの重なりは「6」です。(たぶん)
これが皆さまが普段感じているノットの具合です。

では芯地なしではどうなるでしょうか?
1mm減るわけですから、単純計算でいくと1/3ほど薄くなることになります。
実際、芯地なしのトレピエゲでノットを作るとなんとも頼りないものになります。

それでは、芯地なしセッテピエゲの場合はどうなるでしょうか?

身長170cmの私の場合を例に見てみましょう。
私の場合、ノットから垂れる大剣の長さは43cm前後、小剣は大剣より少し長めに出すので45cm前後。
ネックが38cmなので、ノットで使用する長さは21cm前後となります。

では、セッテピエゲの当該部分を見てみましょう。
一番厚い部分の生地の重なりは「10」、一番薄い部分で「4」でした。平均すると「7」です。厚みにすると「3.5mm」

なんだかいい感じですね。
ちゃんと計算されたうえで設計されているであろうことがわかります。

ちなみに今回分解してる生地の厚みは0.2mmでした。
薄いですが、ちゃんとコシとハリがある生地なので、ネクタイとして成立している感じです。

3つのパーツは場合によって美しくない

最後に大剣、なかはぎ、小剣を見ておきましょう。

  

なかはぎが平行四辺形になっていますね。
これも特徴かもしれません。台形を採用しているメーカーが多いかと思います。

ちなみに3つのパーツに分けているのは、生地を効率的に使うためです。
セッテピエゲであれば70~75cm四方、トレピエゲであれば50cm四方の生地があれば、ネクタイ1本を作ることができます。

■長さの比較
Atto Vannucci FAIRFAX
全長 147.5cm 150.0cm
大剣 94.0cm 82.5cm
なかはぎ 23.0cm 21.0cm
小剣 30.5cm 46.5cm

トレピエゲと比べると、大剣が長く、小剣が短いことがわかります。
長い理由については、最初、「大剣側の折り部分を1枚で綺麗に完結させるため」だと思っていました。
しかし、こうして分解して見てみるともっと短くても完結できることがわかります。

次に考えた理由は、「なかはぎを無理やり作った」ことが原因ではないかということです。

展開したものを見ると小剣の形が特徴的なことがわかります。
もともとは、大剣と小剣の2パーツで構成されていたのではないでしょうか。
しかし、使用する生地に無駄が多く出てしまうため、なかはぎを作る必要がでてきた。
その際、どこで区切るかを考えるわけですが、「小剣の右側の三角形部をそのまま延長すれば具合がよさそうだ」という結論になったと予想します。
長さのオーダーについても「なかはぎでの調整で容易にできる」という特典もつきますし。

なんとなくそれっぽい気がします。

しかし、そうした結果、小剣ずらしをしたときに問題が表面化することになります。


※ストライプ柄がわかりやすいので、トレピエゲのもので代用

継ぎ目の部分で柄が分断されていますね。
小剣ずらしをすると、小剣となかはぎの継ぎ目が相対した人から見えてしまいます。

これではお世辞にも美しいとは言えないでしょう。

無地や小紋はそこまで目立ちませんが、ストライプは非常に目立ちます。
当然、大きい柄も同様です。

この辺りまで気を使っているメーカーは、私の知る限りではごくごく僅かしかありません。

小紋や大柄の柄合わせとか、聞くだけでもやりたくないですね。。。
ですので、私が作る場合は、なかはぎ無しで継ぎ目部分が衿の中になるように作っています。
その分、無駄になる生地量が多くなってしまいますが。。。

総括

Atto Vannucciのネクタイには、当たり/はずれがある。

今回分解したものは、はずれ寄りのものだったように思います。
まあ表層的な部分はちゃんとしていましたが、見えない部分がちょっと雑だったなと思った次第です。

当然、ちゃんと見えない部分も作り込まれているものもあると思います。
作る職人さんも少ないとのことですし、きっと経験の浅い職人さんが作ったものに今回はあたったのでしょう。


というわけで、解体レビューをしてみましたが、こうして文章に起こすのは初めてのことなのでまだまだ手探り状態です。
まだ自分のなかでも文章の方向性が定まっていないので、気長に見ていただければと思います。

さて、次は何を解体しようか。

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